この町に住むことになった①

先日、地域のイベント会場を訪れた際に、役場の職員と思しき人から声をかけられた。彼は町への移住推進の担当で、この町では珍しい若い家族(と言ってももう40代なのだけど)である僕たちについて少し知りたがっていた。

 

この町に引っ越してきた理由や経緯についていくつか質問されたりしたものの、夫婦で答えていたせいかその場で思い返して答えていたせいかあまりうまく説明できない部分があったように感じたので一回整理しておこうと思う。

 

結婚して2,3年が経ち、そろそろ子供が欲しいなと考えていた僕たちは、子供を育てる環境について少し話をした。結婚をする前、僕が考えていたこととしては、子供が大きくなるまでは賃貸で生活し、子供が出て行ったら小さな家を買って余生を過ごす。というものだった。子供の人数や成長に合わせて必要な家の大きさは変化する。それに合わせて家を探せばいいじゃない。という考えだ。

 

でもその時に話をして改めて考え、二人で意見が一致したことは、『子供はなるべく自分たちの手で育てたい』というものだった。待機児童問題が世の中で騒がれていたことも僕たちの考えに多少影響したのかもしれない。都内に住んでお互いに仕事を続けながら神経をすり減らして保育園を探して子供を預けるよりも、どちらかが仕事を辞めて子供を育てればいいじゃない。と思った。と同時に、仕事を辞めるなら僕が辞めたほうがいいなという結論にもすぐにたどり着いた。

 

僕は会社員で、そこそこの収入をいただいてはいたけれども、会社は順風満帆とはいえず常に不安定な状態にあった。対して妻はというと、会社員を辞めて独立し、フリーランスで年々稼ぎも増やすことができていた。僕が仕事を続けるならば通勤という足枷がある以上、住む場所にも縛られてしまう。対して妻の仕事は住む場所に縛られない。大袈裟に言うなればパソコン一つあればお仕事ができるのである。

 

それに僕は以前から“子供を育てる”という事にとても関心を持っていた。仕事柄、まだ社会に出ていない学生たちと接し、社会へと送り出す過程を見届けてきた影響もあると思う。

 

僕が仕事を辞めて専業主夫になる。

 

それだけはすんなりと決まったものの、どこに住むかという事や、引っ越すタイミング、子供はいつできるのか?など、ゴールに辿り着くためには、まだまだ色々と検討を重ねる必要があった。

 

つづく