古本屋は年末が忙しい

実に穏やかな年末を送ることができている。去年は引っ越ししたばかりで片付けが忙しかったし、子供がいつ生まれるのかというタイミングだったのであまりゆったりした気持ちで年を越すことはできなかった。一昨年までは年末が忙しい仕事をしていたので毎年のように年越しは職場で迎えていたし、年始も朝から出勤だったので睡眠時間も少なく一年で1番過酷な日だった。

 

今年は年賀状も書いたし、明日は買い出しに出かけてお正月の料理の準備でもしようかと思っている。

 

さて、年末年始が忙しい仕事はそれなりにあると思うが、大晦日の日付が変わるまで忙しいとなるとなかなか見つからないかもしれない。しかも元日は朝から仕事である。年末年始がそんなに過酷だなんて一体どんな仕事だよと思われるかもしれない。タイトルで述べてしまっているので今更隠しても仕方ないが、その仕事とは古本屋である。

 

私は某古本チェーンに長いこと勤めていたのだが、古本屋というのは年末年始が特に忙しい。個人でやっている古本屋などはお店をお休みにしようと思えばできるし、さほど忙しくないのかもしれないが、大手チェーンともなるとなかなか難しい問題もある。年末は大晦日まで営業、年始は元日から営業、年中無休のチェーン店だ。

 

古本屋は年末年始が忙しいと言うと、意外だねというような反応をされることも結構多い。でもあなた考えてみてくださいよ。あなたが本を売りたいときってどういうときですか?

 

昭和から平成を超え、令和になった現代社会においても根強く残っている風習の一つに“大掃除”というものがある。家族であればもちろん、実家を出て1人暮らしをしている学生や社会人であっても、なんとなく新年は気持ちよく迎えたいと思っている。そして、そのために学校が冬休みに入ったら、仕事を納めたら、自宅の片付けをしましょうねという気持ちになる人がやはり多いのだ。

 

家にあるもので片付けたいものは色々あるが、本を処分しましょうという人は多い。なかなか面白かったけれどこれから何回も読むか?と自分の心に問いかけると、そこまでじゃない。とっておきたい気持ちは山々だけれどもう本棚から溢れてしまっている。理由は様々だが、自宅を軽くするために整理された本たち。もちろんそのまま廃棄処分してしまう人もいるだろうし、図書館に寄贈する人もいるかもしれないが、古本屋に持ち込んでみるというのも大きな選択肢のひとつである。

 

そんなわけで年末は非常に古本の持ち込みが多い。試しに12月の最後の3日間に古本屋に本を持ち込んでみてほしい。買取カウンターはきっと大混雑で、ひょっとしたら普段の倍以上待たされるかもしれない。

 

年末以外に古本の持ち込みが多いのは3月から5月のゴールデンウィークまでだ。この時期は人がたくさん動く時期。引越しに伴ってやはり片付けをする人が多いからだ。

 

そして増えた在庫は現金に変えなければならない。基本的に古本屋というのは在庫のコントロールが難しい。発注して商品を能動的に仕入れるわけではなく、お客様の持ち込みを待って受動的に仕入れをしなければならない。持ち込みが多い時期は買取を足切りにするというわけにもいかないので、そういう時期は必然的に在庫が大きく膨れてしまう。従業員の給料を本で支払うわけにもいかない。放っておけば黒字倒産にもなりかねないので売る。年始やゴールデンウィークにセールを実施している古本チェーンが多いのはそういう理由だ。

 

こういう時期は店内の品揃えも良いし、安く購入することができるので、買い物をする消費者としてはとてもお得だ。普段からよく古本を購入するよという人は年始やゴールデンウィークに買い物に行きましょう。

 

さて、今年も残りあと2日。良い年末を過ごして良い年始を迎えたいものですね。