その時、特別印象に残る何かが起こったというわけでもないのに、五感を刺激されると突然ふっと思い出す風景がある。
入間にある雑木林、木と木の隙間から夕陽の光が差し込んでくる。あたりはミンミンゼミとひぐらしの大合唱。僕は一仕事を終えて車に戻るところだった。頬を撫でる風は少し冷たくなり始めていて疲れた体に心地良い。
夏が終わる。
それまで夏なんて暑くて暑くて早く終われと思っていたはずなのに少し寂しい気持ちになる。
ひぐらしの声が聞こえ始めるとその瞬間のことがまるで昨日の出来事のように蘇る。
夏が終わる。