お仕事の依頼

前述の通りこの街は老齢化が進んでいる。いわゆる団塊の世代がほとんどで、41歳の僕ですら若い若いともてはやされるので、なんだか少し恥ずかしい気持ちになる。

 

ある日、インターフォンが鳴った。今日来る予定の荷物なんてあったかしら?ーここは買い物が不便なのでネットでの買い物をかなりしており、週の半分ほどは何かしら荷物が届くーと記憶の糸を手繰り寄せつつ勝手口から外を見てみると、少し見覚えのある近所の御婦人がそこに立っていた。

 

「こんにちは」とお互いに挨拶をしてその場で話を済ませようかと思ったのだが、どうやら長くなりそうだったので仕方なく外に出てみた。話の詳細は長くなるーおそらく1時間くらいは立ち話をしていたーので省くが、要するにネットやスマホ、PCの操作などについて分からないところがあるので、少し手伝って欲しい。という内容だった。1時間3000円のお給料を出すというのだが、僕は別に専門的な知識を持っているわけでもないし、質問に適切に答えられるのかもまだ分からなかったので、最初は無料でいいと話したのだが、お金を払った方がビジネスとして割り切って遠慮なく聞くことができるので払わせてくれと言うので、1時間2000円時給をいただくことにした。

 

きちんと期待に応えることができるのか些か不安を持ちながらも、訪問して相談を受けたのだが、内容的には僕にもわかるもので少し安心した。雑談も多かったが、話し相手になるというのも1つの仕事かしら?と思いつつ、1時間半で3000円のお給料と手作りのお菓子とコーヒー。久しぶりの労働である。

 

御婦人はたいそう喜んでくれて、私が専業主夫だということを知ると、この街ならきっと需要があるからこういうサービスやってみたらいいんじゃない?とアドバイスをくれた。

 

たしかに大手家電量販店などではそういうサービスがあった気がしたが、この街でそこまで依頼ってもらえるものかしら?などと思いながら歩いていると、町の掲示板にある貼り紙が不意に目に留まった。

 

 

『簡単なPCの操作、設定など引き受けます。5分で500円 連絡先:090-◯◯◯◯-××××』

 

 

ここまででなくとも、もう少しもらっておくんだったかな。と、少し欲を滲ませながらも僕は清々しい気持ちでいた。